以前の私は、できなかったことや足りないところばかりに目が向いていました。
「まだまだだな」「もっと頑張らなきゃ」。
そんな言葉を、無意識のうちに自分に向けていた気がします。一日の終わりに振り返るとき、できたことよりも、できなかったことばかりを数えていました。達成したことよりも、まだ残っている課題ばかりを見つめていました。
それは、向上心と言えば聞こえはいいかもしれません。でも実際は、自分を責めて、追い詰めて、疲れさせていただけだったのかもしれない。今はそう思います。
ある日、ふと気づきました。「このままでは、いつまで経っても自分を認められない」と。どれだけ頑張っても、達成しても、その先にはまた新しい「足りないもの」が見えてくる。そんな終わりのない道を、私は歩いていたのです。
そこから、少しずつ変わり始めました。できないことを数えるのではなく、できたことを見つけること。足りないところを嘆くのではなく、今あるものに目を向けること。その小さな習慣が、私の心を少しずつ変えていったのです。
否定の言葉ばかりを使っていた日々
振り返ってみると、以前の私は本当に自分に厳しかったと思います。
朝起きたとき、「また寝坊してしまった」。仕事中、「もっとうまくできたはずなのに」。夜寝る前に、「今日も思うように過ごせなかった」。
一日の中で、どれだけの否定的な言葉を自分に投げかけていたでしょうか。そして、そのたびに心が少しずつ重くなっていったことに、当時の私は気づいていませんでした。
他人には優しくできるのに、自分には厳しい。友人が同じ状況だったら「大丈夫だよ」「十分頑張ってるよ」と声をかけるのに、自分に対しては容赦なく「まだ足りない」と言ってしまう。
この矛盾に気づいたとき、愕然としました。なぜ、自分だけにこんなに厳しいのだろう。なぜ、自分には優しい言葉をかけられないのだろう。
自分を奮い立たせるためだと思っていました。でも実際には、自分を疲れさせ、自信を削り、心を固くしていただけだったのです。
前向きな言葉は、自分にかける言葉でもある
言葉は、不思議です。
誰かに向けた言葉であっても、いちばん近くで聞いているのは、いつも自分自身。
これは、声の仕事をするようになってから、特に強く感じるようになったことです。マイクの前で誰かを励ます言葉を読んでいると、その言葉が自分の心にも染み込んでくる。感謝の言葉を声にのせていると、自分の心にも感謝の気持ちが満ちてくる。
言葉は、発した人にも必ず影響を与えるのです。
だから私は、少しずつ言葉を選ぶようになりました。
「できなかった」ではなく「ここまでできた」。 「まだ足りない」ではなく「ここはよかった」。 「失敗してしまった」ではなく「次はこうしよう」。
最初は、とても難しかったです。長年の習慣で、否定的な言葉が先に出てきてしまう。でも、意識的に言い換える練習を続けました。
そんなふうに、いいところを見つける練習を始めたのです。
最初は形だけでもいいから、とにかく肯定的な言葉を使ってみる。すると不思議なことに、少しずつ心がその言葉に追いついてくるのです。無理やり前向きになるのではなく、言葉が心を優しく導いてくれる。そんな感覚がありました。
いいところは、大きくなくていい
「いいところを見つける」と聞くと、何か立派な成果や、誰かに誇れるようなことを探さなければいけないように感じるかもしれません。
でも、そんなことはないのです。
立派な長所でなくていい。誰かと比べて優れていなくてもいい。
・今日は、ちゃんと休めた ・無理をしなかった ・静かに過ごせた ・朝ごはんを食べた ・部屋を少し片付けた ・深呼吸をした
そんな小さなことでも、十分に「いいところ」だと思っています。
むしろ、そういう日常の小さなことにこそ、本当の自分の成長や変化が表れているのかもしれません。
「今日は、予定通りに進まなかったけど、焦らずに対応できた」 「思うような結果は出なかったけど、諦めずに続けられた」 「完璧ではなかったけど、自分なりにベストを尽くせた」
こうした「けど」の後の言葉に、いいところは隠れています。
以前の私は、「けど」の前の否定的な部分ばかりに目が向いていました。でも今は、「けど」の後の肯定的な部分に光を当てるようにしています。それだけで、同じ一日の見え方が全く変わるのです。
「休めた」も立派ないいところ
特に大切にしているのは、「休めた」ということを、いいところとして認めることです。
以前の私にとって、休むことは「何もできなかった」ことと同じでした。何か生産的なことをしなければ、成長しなければ、前に進まなければ。そんなプレッシャーに、常に追われていました。
でも、休むこともまた、大切な行動なのだと気づきました。
体を休めること、心を休めること。それは、次に進むためのエネルギーをチャージすることであり、自分を大切にすることでもあります。
「今日は疲れていたから、早く寝た」 「無理をせず、予定をキャンセルして家でゆっくりした」 「何もしない時間を作って、ぼーっと過ごせた」
これらは全て、「いいところ」です。自分の心と体の声に耳を傾け、必要なケアをした。それは、自己管理ができているということであり、自分を大切にできているということ。立派な「できたこと」なのです。
休むことに罪悪感を感じる必要はない。むしろ、適切に休めることは、長く健やかに生きていくための大切な能力だと、今は思っています。
言葉が変わると、心の向きが変わる
前向きな言葉を使うようになると、心の向きが、少しだけ変わります。
劇的な変化ではありません。ある日突然、すべてがポジティブになるわけでもありません。でも、確実に、少しずつ、心の風景が変わっていくのです。
無理に元気にならなくても、自分を責める回数が、確実に減っていく。
落ち込むことがなくなるわけではありません。うまくいかない日もあります。でも、そんな日でも、「まあ、そんな日もあるよね」と思えるようになる。自分を許せるようになる。
「今日はダメだった」と全否定するのではなく、「今日は思うようにいかなかったけど、明日また頑張ろう」と思えるようになる。この違いは、とても大きいのです。
前向きな言葉は、自分に寄り添ってくれます。「あなたはダメだ」と突き放すのではなく、「あなたは頑張ってる」と認めてくれる。その温かさが、心を支えてくれるのです。
声にも表れる、心の変化
その変化は、声にも表れているように感じます。
声の仕事をしていると、自分の心の状態が声に如実に現れることを実感します。心が固いとき、声も固くなる。心が疲れているとき、声も疲れて聞こえる。
でも、自分に優しい言葉をかけられるようになってから、声の質が変わったように感じます。
言葉がやわらぐと、声も、自然とやわらかくなる。
心に余裕があると、呼吸も深くなり、声にも温かみが生まれます。自分を認められていると、自信が声に現れます。自分を大切にできていると、その穏やかさが声に宿るのです。
リスナーの方から「声が優しくなりましたね」「聞いていて安心します」と言っていただくことが増えました。それは、きっと私自身が自分に優しくなれたからなのだと思います。
声は、心の鏡。自分にかける言葉が変われば、心が変わり、声も変わる。そんな繋がりを、日々感じています。
他者への言葉も変わっていく
面白いことに、自分に前向きな言葉を使えるようになると、他者への言葉も自然と変わっていきました。
自分の小さな「いいところ」を見つけられるようになると、他者の小さな「いいところ」も見えるようになるのです。
友人が「何もできなかった」と落ち込んでいるとき、「でも、休むことも大切だよ」と言えるようになりました。誰かが失敗して自分を責めているとき、「そんな日もあるよ。次頑張ればいい」と声をかけられるようになりました。
それは、自分自身にそう言ってきたからこそ、心から言える言葉です。経験に裏打ちされた、本当の優しさなのだと思います。
自分に厳しい人は、他者にも厳しくなりがちです。でも、自分に優しくなれると、他者にも自然と優しくなれる。その循環が、周囲の空気を変えていくのを感じています。
いいところを見つける具体的な方法
では、具体的にどうやって「いいところを見つける」習慣を作っていけばいいのでしょうか。
私が実践しているのは、寝る前の「できたこと日記」です。
その日にできたこと、よかったことを、3つだけメモします。大きなことでなくていい。本当に小さなことでいいのです。
「朝、気持ちよく起きられた」 「美味しいコーヒーを淹れられた」 「友人に優しい言葉をかけられた」
こうして言葉にすることで、自分の中に「いいところ」が積み重なっていきます。そして、いいところを探す目が養われていくのです。
最初は難しく感じるかもしれません。でも、続けていくうちに、日中から「あ、これは今夜のメモに書こう」と思えるようになります。いいところを見つける目が、日常の中で自然と働くようになるのです。
おわりに
いいところを見つけることは、自分をごまかすことではなく、自分を大切に見る、という選択なのだと思います。
現実から目をそらすことでもありません。できないことや、改善すべきところを無視することでもありません。ただ、それと同じくらい、できていることや、いいところにも目を向けるということ。
バランスを取るということです。
前向きな言葉は、誰かを励ますだけでなく、自分自身を、そっと支えてくれる。
毎日使う言葉だからこそ、その影響は大きいのです。自分に向ける言葉が優しくなれば、心も優しくなる。心が優しくなれば、声も、表情も、行動も変わっていく。
これからも私は、やさしい言葉を、まずは自分に向けて使っていきたいと思います。
自分のいいところを見つけること。それは、自分を愛するということ。そして、自分を愛せる人だけが、本当の意味で他者を愛せるのだと信じています。
今日も読んでくださり、ありがとうございます。
あなたも、今日の自分のいいところを、一つでも見つけられますように🌿
あとがき
この文章を書きながら、改めて自分の変化を振り返ることができました。
以前の自分を思い出すと、本当に自分に厳しかったなと思います。そして、それで苦しんでいたことにも気づきます。
でも、その経験があったからこそ、今の自分がある。そう思えることも、「いいところを見つける」習慣の成果なのかもしれません。
完璧な人間などいません。誰もが、できることとできないことを抱えて生きています。だからこそ、自分に優しくすること。それは、決して甘えではなく、生きていくために必要な知恵なのだと思います。
この文章が、少しでもあなたの心を軽くできたら嬉しいです。そして、あなたも自分のいいところを見つけられますように。
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